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ワンランク上のサービスで元気のない男性客に活力を

「四十代以上の男性に元気になってもらいたい」。2月28日、「本格派理容室・あかつき」(福山市三之丸町)の店舗を改装し、リニューアルオープンした。創業五十年の節目を迎え、十七年ぶりとなる全面改装。「四十代からの男磨き」をコンセプトに、理容業の新しいイメージを提案する。

店舗面積は九十二平方メートル。白と木目を基調とした高級感のあるシックな店内に、半個室の施術台が五台。従来より二台減らし、ゆったりとしたスペースを確保したほか、擦りガラスのパーテーションで半個室化。プライバシーに配慮した仕様となっている。「施術台数についても、何年も前から利用客とのヒアリングを重ねた。お客様の回転数よりも、ゆったりと落ち着ける空間であることを重視したい」
フロントロビーと施術スペースは擦りガラスのドアで仕切られ、外からは中の様子がうかがえないレイアウト。
「一見、『何の店だろう』と、思うほど、まったく理容室には見えない。これも当社が提案する、新しい理容室の形」。消費者の理容室離れが進む中、外観や内装面でも従来の“パパママ経営”的な理容室のイメージを変えたい、と意気込みを語る。

新メニューを提案

「低価格をセールスポイントにした理・美容室が増えつつあるが、あえて従来どおりの価格で、“高級志向”かつワンランク上のサービスを行いたい」。都市部を中心に年々増加している美容師に比べ、理容師の数は減少の一途をたどっている。平成20年3月の統計によると、国内の美容師数は約43万人。対して理容師の人数は25万人弱だ。
この差は今後も広がるだろう、とみる。「(衰退は)理容業界が明確なビジョンを掲げてこなかったことが原因では。一方、美容業界も厳しい競争にさらされ、各店が生き残りをかけて努力しているのが現状」。美容業の真似をするのではなく、理容業としてどうあるべきかを模索し続けてきた、と話す横溝社長。オリジナリティーを追求するため、男性の身だしなみ(グルーミング)や「アンチエイジング」を積極的に提案する。
同店で二〇年の実績があり、頭皮・毛穴の皮脂取りを行う「スキャルプエステ」(三一五〇円)、顔の骨のゆがみを調整し、筋肉をほぐし、皮膚に潤いを与える新メニュー「あかつきオリジナルメンズエステ」(五二五〇円」・耳つぼマッサージ、耳エステ、耳かきなど至れり尽くせりの「DXイヤークリーン」(四二〇〇円)など種類は豊富。すべてに共通するのは「カットのオプションではない、本格的なメニューであること」

企業的発想を重視

こうした“次世代型”とも言える理容室は、東京など都市部では注目され始めているが、福山ではまず見当たらない。横溝社長は大阪・京都で八年間修行。理容技術のほか、こうした新しい発想の取り入れ方や経営ノウハウを学び、十七年前に帰福した。
平成8年に法人化し、代表就任後、経営理念や基本方針をスタッフ全員に文書で伝えたという。そこには「新しい理容業を創造する」との確かな信念が盛り込まれている。「理念や方針などを口で伝えるか、文章化して明確に伝えるかが、『家業』と『企業』の発想の違い。業界で生き残るためには、企業的発想を重視し、理容業の魂を伝えることが必要」
「あかつき」で修行を積んだ多くのスタッフが、備後地域でメンズサロンを開業。地域の理容業発展に少なからず貢献してきたとの自負もある。
「常に、福山の理美容界に良い刺激を与える存在でありたい。今、世の男性はへとへとになって働いているためか、元気がないように見える。当店のような理容店が少しでも元気と活力を与えられれば」。
業界に新風を吹き込む「あかつき」の挑戦は続く。