■記事

散髪しながら絵画鑑賞

福山の理髪店「あかつき」はギャラリー
開店13年、客「楽しみ」

版画家・藤井さん個展 31日まで

福山市の版画家藤井文夫さん(83)=丸之内1丁目=が、理髪店を会場に個展を開いている。絵画などの展示スペースを持つ同市明王台3丁目の「あかつき」。一風変わったシチュエーションが、作品を引き立てている。31日まで。

藤井さんは小学校教諭時代、学校文集「山びこ学校」の刊行で知られる無着成恭氏らの活動に感銘。木版画指導をするうちに自身も版画を彫り始めた。福山市立日吉台小学校を退職後、日本版画会会員となって大作を手がけるようになり、同会の審査員も務めた経験もある。
書道歴も長く、本紙の書道企画「のびのび」の審査員でもある。

個展が開かれている「あかつき」は、横溝暁さん(73)が13年前に開業した。子どもに譲ったJR福山駅近くの店でも小規模の展示をしていたが、「自分が好きな絵で、お客さんにも喜んでもらいたい」と、50平方メートルの店内の壁面に、100号の大作でも飾れるように金具などを設置。客が休憩する場所だけでなく、散髪中も観賞できるように、鏡の横には小品を飾るようにしている

開店以来、知り合いやお客さんから紹介されたお客さんから紹介された作家らの個展を2ヶ月ごとに絶やさず、続けてきた。「お客さんが楽しみにしてくれている。『ここに飾ると作品が良く見える』と言ってくれる作家さんもいるんですよ」と、妻の和恵さん(74)。個展の日程はすでに、秋までいっぱいだ。

今回展示しているのは、藤井さんが1999年に日本版画会展40周年記念賞を受賞した「飾り牛」をはじめ、奥の細道を旅して描いた「静寂」、地元の鯛網を描いた「瀬戸内の漁師二人」など14点。

いずれも木版画だが、黒一色のものや、版木5~8枚を使った多色刷りのものまでバラエティーに富んでいる。藤井さんは「江戸時代の浮世絵から現代に続く木版画。好きで彫り続けてきた作品だが、少しでも見た方の潤いになれば」と話している。